アリストテレスの著書「弁論術」の中には、言葉で人を説得するための三原則が書かれています。「エトス(信頼・人格・人柄)」「ロゴス(論理・理屈・理性)」「パトス(情熱・熱意・共感)」です。
ロゴス=理論立ててロジカルに相手を説得すること
パトス=熱く語って熱意で相手を説得すること
こう聞くと
「私はその道の第一人者だから、私が書いている時点で説得力は満点だ」
「私は論理的で矛盾のない文章を書いているから、説得力には自信がある」
「私は人の感情に訴えかけるストーリーに定評があるから、人の心を動かす文章が書けている」
と思っている方がいるかもしれません。
しかし、エトス(信頼)ロゴス(理論)パトス(情熱)のどれかひとつの要素で説得しても、うまくいきません。3つの要素すべてが揃って、はじめて人は説得され自ら動こうと思うのです。
ビジネス文章ではロゴス、つまり論理が優先されがちです。書いてある内容は良くても、熱意が感じられない文章では人は動きません。論理立てて書くという、ビジネス文章で重要な点は押さえつつ、パトス(情熱)を感じさせる言葉や事例を入れた上で、さらにエトス(信頼)を加えることが、勝てるビジネス文章の必須項目です。
ビジネスにおいては、言葉や内容など「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」の方が重要視される場面が多いと言われますが、思いあたる節はありませんか?
会社の会議室では、上司やキーマンが発言したことが重要視され、同じことを新人や信頼されていない人間が発言したところで、見向もされないことが多々起こっています。文章は内容だけではなく、信頼できる人の言葉・発信であることが大切です。
この「信頼」は、必ずしも社会的な地位や立場に限りません。伝えたい相手との間に、「この人の言うことだったら聞いてみよう」と思わせる信頼関係があれば、エトス(信頼)の要素は満たしていることになります。
参考書籍 「強い文章力養成講座」川上徹也著 http://www.diamond.co.jp/book/9784478027097.html
記事執筆:ライター たかはしなつこ