私は以前、大手求人広告媒体を運営する会社に勤めていたことがあり、数百社に取材してインタビューし、1000社近い求人広告のコピーを書きました。
職業を募集する仕事の広告コピーライティングは今も大好きな仕事です。クライアントが広告費を投資している以上、必ず求められる結果を出せるようありとあらゆる手を尽くしました。
どんなに難しい条件でも採用成功は必須です。採用成功は狙って取りに行かなければなりません。
「成功するかな」といった曖昧な姿勢ではなく、常勝無敗のスタンスで求人広告制作に取り組んだ経験は独立してからの会社経営にも活きています。
今回は求人広告の取材ライティングを行なっているライターさんからいただいたご質問に回答させていただきます。
求人広告の取材を行なう際、質問がスムーズに出てきません。インタビューでお客様からいいネタを引き出すために、テンポ良く質問するコツがありましたら教えてください。
求人広告の取材は、事前準備で9割以上の結果が決まります。事前準備で仮説を立てて、原稿の完成イメージまで作っておくぐらいの気持ちで入念に事前準備を行ないましょう。
事前準備で分かることは、取材の場では質問しません。取材では、取材の場でしかないと得られない情報を引き出すようにしましょう。
仮説の立て方を段階的にご紹介します。
業界上の競合と、採用上の競合を分析
業界上の競合とは、同じ業界で比較した際の競合です。たとえば大手航空会社ではANAとJAL、大手携帯電話キャリアのauとdocomo、Softbank、自動車メーカーのトヨタ、スズキ、ホンダなどです。同じ業界の会社を業界地図で比較した際の、会社の立ち位置を客観的に分析します。業界内での競合優位性を考えたとき、トヨタ自動車とトヨタ自動車の下請け会社なら、トヨタ自動車の方が優位性が高いといえます。
採用上の競合とは、求職者ターゲットから見た競合です。たとえば不動産業業界の営業マンの職種に応募しようとしている求職者は、同時に食品メーカーの営業マンにも応募するかもしれません。業界は違っても職種や応募条件が似ていれば、採用上の競合になります。同時期に同じ媒体に採用上の競合の原稿が掲載される際には、採用上の競合と比較した際の優位性も広告で伝えていく必要があります。
業界上の競合と、採用上の競合、両方を分析して、それぞれに関する優位性を明確にすることが、仮説を立てる際の第一歩といえます。
クライアント企業の財務諸表を分析
四季報や東京商工リサーチを見て、クライアント企業の財務諸表を分析します。たとえば業界上の競合に比べて、社員一人当たりの粗利が高い場合、どのようにして社員一人当たりのパフォーマンスを上げる工夫を行なっているのかを考えます。教育制度が充実していたり、社員のモチベーションを上げる人事評価制度が整っていたり、といった情報がないかを調べます。調べても情報が見つからなければ、取材の場で確認します。
クライアント企業の広報物はすべてチェック
上場企業の場合は直近のIR情報を、その他プレスリリースや社長ブログ、著書、広報物、パブリシティ全般にひと通り目を通して、企業が伝えようとしているメッセージや、将来の展望を分析します。
データはその会社のあり方や、未来を伝えてくれます。
表に出ているデータを分析することで、企業トップの社長自身も気づいていない法則性や、将来への動向を導き出すことができるでしょう。ミステリー小説の探偵になった気分でデータを分析し、仮説を立ててみましょう。
仮説を立てる際のおすすめ本です。
採用成功の条件が難しい企業であればあるほど、事前準備を入念に行なっていくつもの仮説を立ててから取材に臨みます。
綿密に仮説を立ててから取材に臨むことで、思いもよらなかった強いキーワードを引き出せたり、頭に電流が走るような説得力のあるキャッチコピーが生まれることも少なくありません。
アクセスを爆発させて、絶対に成果を出したい広告コピーを書くときには、入念な事前準備を行なって取材に臨むこと。ぜひ、意識してみてくださいね。